続,親の介護は「子の老親に対する扶養義務」なのでしょうか。

前回の続きです。扶養義務と介護の関係を見ていきます。

4.介護は引取扶養だという誤解

(1)実際おこなわれている引取扶養と呼ばれるものの内訳
実際におこなわれていている引取扶養と呼ばれるものを細かく見ていくと,次のような内訳になっています。
ア 住まいの提供
イ 衣服の提供
ウ 食事の提供
エ 外出の付添い
オ 傷病寺の看病
カ 重病時の介護
キ 認知症などの介護

(2)「扶養義務としての引取扶養」と「労働提供である介護を実質とする引取扶養」

ア 扶養義務としての引取扶養
金銭支払いに変わる現物支給としての扶養義務にあたります。上記のア,イ,ウについては金銭を支払うかわりに現物を支給するのですから,問題はないといえます。
イ 労働提供である介護を実質とする引取扶養
労働力の直接の提供をおこなう介護労働力の提供を強制するものとして好ましくありません。上記のエ,オ,カ,キについては経済的な給付でなく,労働力の提供になってしまいます。

(3)介護部分の取扱い
  引取扶養と呼ばれるもののうちで介護に相当する部分については,寄与分としての清算が考えられます。また,委任契約や事務管理としてその費用や損害を請求できる可能性も出てきます。

5.まとめ
 扶養義務と介護は混同されることが多いのですが,別のものと考えた方がよいようです。子の老親の介護は扶養義務でもありませんし,また,介護は義務でもないということになります。

参考テキスト
「実務 家族法講義 第二版」橋本昇二・三谷忠之著,民事法研究会(2012年)
「民法Ⅳ 補訂版」内田貴著,東京大学出版会(2005年)

 

                                    神宮司行政書士事務所 055-251-3962 090-2164-7028

Follow me!

Contents

投稿者プロフィール

神宮司 公三
神宮司 公三神宮司行政書士事務所所長
山梨県甲府市の特定行政書士。守秘義務がありますので相談したことが外部に漏れることはありませんので,安心してご相談ください。幅広い範囲のお困りごとに対応しています。お気軽にお問い合わせください。遺言書作成,相続手続の相談,官公署への許認可の相談・申請手続き代理,任意後見・法定後見のご相談,ご契約についてのご相談など。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


©2014 神宮司行政書士事務所