親の介護は「子の老親に対する扶養義務」なのでしょうか。

 扶養,介護,生活保護の関係について少し整理してみようと思います。
1.扶養
扶養とは自分の資産,労力(自分の力だけでは),その生活をすることができない人に経済的な援助を与える制度をいいます。公的扶養と私的扶養に区分されます。

(1)公的扶養
 生活保護法などによる公的扶助制度(社会保険制度)による経済的援助です。
2)私的扶養
 親族が経済的に助け合う制度です。その手段により金銭扶養,引取扶養に区分されます。

ア 金銭扶養
  お金を出すことによって経済的に困難に陥っている人を援助します。
イ 引取扶養
困窮している家族を引き取って,お金を出すかわりに住居,食事,衣服の提供します。本来は介護は含みません。
(3)強制執行
私的扶養において金銭扶養は強制することができますが,親を引き取って生活を支援すること(引取扶養)を強制することはできません。

2.親子の扶養義務
 扶養義務の性質によって,生活保持義務と生活扶助義務とに区分するのが通例です。
(1)生活保持義務(親による未成熟児への扶養義務)
未成年の子に対する親が果たさなければならない扶養義務は生活保持義務であるといわれています。子に親と同等程度の生活をさせる義務があります。夫婦の関係も生活保持義務にあたります。
(2)生活扶助義務(子による老親への扶養義務)
子の老親に対する義務は,生活扶助義務とされています。扶養する人が分相応の生活を送った上で,ゆとりがなおあれば,支援すればよいとされます。その支援の程度も困窮した家族が最低限度の生活ができる範囲と考えられています。

3.公的扶養(生活保護)と私的扶養(親族の扶養)との優先関係
 受給要件説と事実上の順位説とがあります。
(1)受給要件説
扶養が可能な親族がいるときには生活保護は受けることができないと考える説です。実務はこの考えによっておこなわれています。
(2)事実上の順位説
親族が現実に扶養している場合は,ダブっては生活保護は受けられないとする説です。つまり,扶養可能な親族がいても,その親族が現実的に扶養をしないのであれば生活保護が受けられるということになります。
(3)現状
途中までは受給要件説に従い手続が進められています。扶養可能な親族がその義務を果たさない場合には,困窮者保護の観点から生活保護を実施します。その支払の保護費は本来扶養可能な親族が負担しなければならないものなので,その額を負担義務者の親族に請求することになっています。しかし,実際に立替金の返還徴収がなされたという話しを聞いたことはありません。

長くなってしまいましたので介護と扶養義務の関係については次回にしたいと思います。

                                   神宮司行政書士事務所 055-251-3962 090-2164-7028

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投稿者プロフィール

神宮司 公三
神宮司 公三神宮司行政書士事務所所長
山梨県甲府市の特定行政書士。守秘義務がありますので相談したことが外部に漏れることはありませんので,安心してご相談ください。幅広い範囲のお困りごとに対応しています。お気軽にお問い合わせください。遺言書作成,相続手続の相談,官公署への許認可の相談・申請手続き代理,任意後見・法定後見のご相談,ご契約についてのご相談など。

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