離婚すると相続の権利はどうなるか(離婚と相続)
今や離婚を経験する家庭はめずらしくなくなりました。それにともない離婚がもたらす相続のトラブルも増えています。今回は離婚にともない変動する相続人について考えてみます。
なお,ここでは分かりやすくするために,例として父親の相続財産に対する相続権について述べますが,母親の相続財産に対する相続権についても同様ですので父親を母親と読み替えてください。
Contents
1.離婚
婚姻関係を終わらせることをいいます。俗にいう,元の赤の他人に戻ることをいいます。離婚によって夫婦が赤の他人に戻っても,親子関係が消滅することはありません。
(1)離婚による当事者間での効果
①復氏・婚氏続称(民法767条)
結婚(婚姻)の時に苗字(氏)を変えた配偶者は離婚にともない結婚前の苗字に戻ります。また,希望によって結婚してから名乗っていた苗字を使い続けることも出来ます。
②配偶者相続権の消失
離婚により配偶者の身分の地位を失うことにともない配偶者としての相続権(民法890条)を失います。
③同居・協力・扶助の義務の消失
民法752条の同居及び扶助の義務がなくなります。
(2)当事者以外に対する身分上の効果
①姻族関係の終了(民法728条)
姻族関係は離婚によって終了します。
姻族というのは①自分の配偶者の血族と②自分の血族の配偶者を言います。夫側から見た場合,妻の両親・兄弟姉妹などが夫の姻族になります。また,夫の兄弟姉妹など血族の配偶者も夫の姻族になります。
なお,妻は血族でもなく,親族でもありません。その身分は配偶者となります。また,妻の血族の配偶者(たとえば妻の兄の配偶者)は夫の血族ではありません。
②親権・子の監護に関する事項の定め
子がいる場合,父または母を子の親権者に指定しなければなりません。また,養育費,面会交流など子の監護に必要な事項を定めなければなりません。(民法819条,766条)
2.離婚にともなう相続権の変動
(1)配偶者としての相続権の消滅
元夫が死亡してもその相続財産に対する相続権は元妻にはありません。配偶者という身分上の地位がなくなった結果として,配偶者相続権がなくなるのは前述の通りです。
(2)子の相続権(民法887条)
父母が離婚をしても父母との親子関係は消滅することはありません。したがって,同居・別居,親権の有無,交流の有無にかかわらず親の相続財産に対する相続権は消えることはありません。
3.再婚にともなう相続権の変動
(1)再婚相手の相続権
父が再婚した場合,その再婚相手が配偶者としての相続権を獲得します。当然配偶者の身分上の地位を失った元妻には相続権がないことはいうまでもありません。
(2)再婚相手との間の子の相続権
父と再婚した女性との間の子は当然父の子としての相続権を獲得します。
前妻との間の子と再婚の相手との間の子は,同じ父の子として対等です。
なお,再婚相手の女性のいわゆる連れ子については,父の子ではありませんので相続権はありません。ただし,父がその連れ子と養子縁組をすることにより法律上の子になり,父の子としての相続権を獲得します。(民法809条)
4.まとめ
離婚にともない当事者夫婦は身分上赤の他人に戻りますが,親子の身分上の地位は消えることはありません。したがい,身分上の地位により得られる相続権は事情のいかんにかかわらず(推定相続人の廃除は除く)存続することになります。
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