成年後見制度と家族の信託制度の関係

 ここで取り上げる信託制度は信託制度全般についてではなく、主として家族間で結ばれる信託契約に基づくもので、家族の福祉に関する契約を念頭に置いています。家族信託とか福祉信託とか呼ばれるものについてです。

Contents

1.後見制度と信託制度に共通する点

 後見制度も信託制度も財産管理を行うための制度であるという点では共通しています。

法定後見では被後見人の全財産がその管理の対象となります。
任意後見では任意後見契約(委任契約)の委任者の財産が管理の対象になります。
信託制度では信託行為によって定めた委託者の財産がその管理の対象となります。

 法定後見をのぞいては、管理を依頼する財産の所有者自身が財産管理を行う者を指名します。
 法定後見においてはその管理者(法定後見人)を家庭裁判所が決めます。

2.後見制度と信託制度の財産運用方針

(1)法定後見制度の財産運用方針

 本人(被後見人)の財産は本人のためにのみ使うことが管理の基本となっています。したがって、本人以外の家族のために本人の財産を使うことは困難になります。
 実務においては、本人の財産を本人のために自由に使用することもむずかしくなっています。財産をいたずらに減少させることがないように、保全を主体とする管理が基本です。

(2)任意後見制度の財産運用方針

 任意後見制度についても法定後見制度と同様、本人(委任者)の財産は本人のために使用することが基本です。任意後見契約の契約内容の範囲は法定後見制度が想定する範囲であると考えられます。
 民法858条、任意後見契約に関する法律2条1号においてともに「生活、療養看護及び財産の管理に関する事務」としている点からもうかがえます。

(3)信託制度の財産運用方針

 信託制度においては、委託者の財産を本人(受益者である委託者))のためにはもとより委託者以外の家族である配偶者、子、その子の家族(委託者以外の受益者)などに対して自由に使うことができます。
 さらには、法定後見、任意後見はともに被後見人、任意後見委任者の死亡を持って財産管理は終了しますが、信託制度においては信託行為(契約)により、委託者の生存、死亡にかかわらずその管理を有効に継続をさせることもできます。

3.後見制度と信託制度のその他の相違点

(1)契約、利用開始時期

①契約

 任意後見契約、信託契約は委任者、委託者の判断能力に問題がない場合に契約が可能です。
 法定後見は契約ではありませんので4親等の家族等が家庭裁判所に審判を申し立てます。

利用開始時期

 任意後見契約は委任者の判断能力が不十分な状況になった場合に任意後見監督人が選任されたときに効力が生じます。
 信託契約では信託行為(契約)により利用開始時期を自由に決めることができます。
 法定後見は家庭裁判所の審判に不服申立がなければ開始します。
 
(2)財産管理の権限内容

 法定後見人は包括的代理権と取消権を持ちます。
 療養看護及び財産の管理に当たっては本人の意思を尊重し、かつその心身の状態及び生活の状況に配慮する身上配慮義務があります。

 任意後見人は任意後見契約の定めに応じた代理権を持ちますが、取消権はありません。
 任意後見においても身上配慮義務はあると思われます。

 信託契約の受託者は信託行為(信託契約)の定めによります。委託者の代理人という立場ではなく、委託者から財産を譲り受けた所有者として振る舞います。
 受益者の生活全般にわたる療養看護に関する事務である身上監護に関する包括的な義務はないと考えられます。またそれを行う権利もないと言えます。

4.まとめ

 老後に備え本人だけでなくその家族をも含めた「家庭の安心生活設計」を考えようとするときには、法定後見制度だけでなく、任意後見契約さらには家族のための福祉信託契約の検討が必要になります。

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投稿者プロフィール

神宮司 公三
神宮司 公三神宮司行政書士事務所所長
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