親を勘当する(推定相続人の廃除)
Contents
1.親子関係の絶縁
(1)勘当
地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教教祖・麻原彰晃死刑囚の四女が11月21日、都内の司法記者クラブで記者会見を開いた。
四女は今回、自分が死亡した際に、親に自分の財産を渡さないようにしたい、と家庭裁判所に申し立て、認められた。
相続人が虐待をしたり、著しい非行があったりする場合、その相続人に自分の財産を渡さないようにできる、というルールが民法にはある。
オウム事件を起こした親とは、縁を切りたい。しかし日本では、法的に親と絶縁する方法はない。その中でも、可能なかぎり縁を絶ちきりたい、という考えだという。
勘当というのは、親子の籍を含めすべての親子関係を抹消することで、「親でもなく、子でもない」関係になることです。
子が親を勘当するという話ははめずらしく、「推定相続人の廃除」という制度が話題になりました。
(2)推定相続人の廃除の限界
勘当という法律上の制度はなく、相続財産関係についてのみ親子関係を切ることを可能としています。
今の日本では親子の縁をなくす制度がないので、現行法で出来ることはしましたが、生きていくにはまだ障害が残っています。戸籍で家族が繋がっていることと、親の記載があることです。結婚や出産などができません。気持ちの問題もありますが、現実の問題でもあります。
著しく問題がある親との縁を切れる制度があった方がいいと私は思います。戸籍をなくすこと、また親の名前を空欄にするなどです。
2.推定相続人の廃除制度
推定相続人の廃除は家庭裁判所に申し立てることができます。また、遺言によって廃除をすることも認められています。(民法892条、893条)
(1)廃除対象者は遺留分のある相続人に限定
遺留分のない相続人は本人が遺言にってその相続人を廃除することができますので、推定相続人のうち遺留分のある相続人のみが廃除の対象です。
したがって、兄弟姉妹をのぞいた、直系卑属(子供、孫など)、直系尊属(親、祖父母)、配偶者に対して相続の廃除を申し立てることができます。(民法1028条)
遺留分というのは最低限遺産相続の分け前にあずかれる相続人の権利をいいます。以前のかきの投稿も参照してください。
*遺留分とは
(2)廃除事由と廃除手続及びその取消し
次の理由のいずれかに該当する場合は、被相続人は家庭裁判所へ廃除の請求をすることができます。
①被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき
②推定相続人にその他の著しい非行があったとき
廃除の取消しはいつでも家庭裁判所に請求することができます。(民法894条)
(3)廃除と相続欠格の相違
相続人の欠格事由と相続人の廃除とは別のものです。
相続欠格該当事由に該当する場合は、特別な手続を踏むことなく当然に相続権を失います。相続をさせるのは正義に反すると感じるようなたとえば被相続人を殺害したような場合です。(民法891条)
相続欠格事項ほど相続させるのが正義に反するわけではないが、被相続人が相続させたくないと感じるような非行があった場合には、家庭裁判所の審判、調停などによって相続権を奪います。
(4)推定相続人の廃除の利用状況
実際に家庭裁判所に廃除が認められて、届け出たものは以下のとおりです。
また、家庭裁判所への廃除の請求・取消しの請求数も次のとおりです。(法務省戸籍統計、裁判所司法統計)
廃除の届出数 廃除・廃除取消し申し立て件数
平成23年 31件 158件
平成24年 38件 193件
平成25年 61件 227件
平成26年 44件 229件
平成27年 43件 199件
わずかではありますが、推定相続人の廃除の制度は一定程度利用されていると言えます。
3.まとめ
親と縁を切りたい、子と縁を切りたいという切実なトラブルを抱えている人達が一定数いるというのが現実のようです。
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