介護度が高いというだけでは成年後見制度は利用できない(要介護者と制限行為能力者)
Contents
1.介護度、制限行為能力の意味
(1)介護度
介護度は介護の必要の程度に合わせて7段階に分かれています。
介護度の低い方から高い方に、要支援1、要支援2,要介護1,要介護2、要介護3,要介護4,要介護5の7段階となります。
要支援1の心身の状況は「食事や排泄はほとんど自分でできるが、掃除などの身の回りの世話の一部に介助が必要。など」です。
要介護5の心身の状況は「食事や排泄、身の回りの世話、立ち上がりや歩行等がほとんどできない。問題行動や全般的な理解の低下がみられることがある。など」となっています。
要支援・要介護状態の目安(一関地区広域行政組合のサイトから引用)
:http://www.city.ichinoseki.iwate.jp/kouiki-gyousei/kaigo/tetuzuki/index.html
(2)制限行為能力
法律行為を単独で有効に行うことができる能力のことを行為能力といいます。
援助を受けないと単独では有効な法律行為をおこなうことが困難である成人の場合に、その援助が必要な程度により3類型に分けています。
援助が必要に人を制限行為能力者と呼び、成年被後見人、被保佐人、被補助人および未成年者に区分されます。
成年被後見人(民法7条):精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者
被保佐人(民法11条):精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者
被補助人(民法15条):精神上の障害により事理を弁識能力が不十分である者
*事理を弁識する能力とは判断能力のことだとされています。
2.介護度と精神上の障害の関係
(1)精神的上の障害があり介護度も高い場合
認知症が典型です。
認知症の症状が重くなるにしたがって、介護の必要な度合いも上がっていきます。
認知症の患者の場合、要介護者であると同時に制限行為能力となります。
(2)介護度は高いが精神上の障害はないとされる場合
交通事故などによる重い身体的後遺障害や筋萎縮性側索硬化症(ALS)が典型です。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は「精神上の障害」をともなわない疾患であると考えられています。
理論物理学者のホーキング博士、医療法人徳洲会の元理事長の徳田虎雄氏、フランス文学者の故篠沢秀夫氏などが筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者だということは有名です。
身体的後遺障害者や筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者の場合、要介護者ではあるが制限行為能力者ではないと言うことになります。
*追記
東京高等裁判所の平成18年7月11日決定で、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者について「わずかな表情筋の動きも廃絶し、意思疏通が不可能であって、社会的に植物状態にあり、認知障害をともなった精神上の障害があると評価できる」と判示した裁判例があります。
3.まとめ
制限行為能力者と認定されるためには、介護の必要性ではなく精神上の障害があることが必要です。
介護の必要性が高いからといって、必ずしも制限行為能力者ではありません。
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