忘れられた夫婦財産契約(1)その概要
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1.世間に忘れられた夫婦財産契約
夫婦財産契約という言葉をお聞きになったことがあるでしょうか。
結婚前に夫婦間の財産について、あらかじめ契約することをいいます。
厚生労働省の 平成28年人口動態統計月報年計(概数)によると平成28年の全国の婚姻件数は62万523件ですが、その年に夫婦財産契約を結び、その登記をした件数は23件です。
このように、ほとんど世間に忘れられた夫婦財産契約制度です。
今回は、夫婦財産契約という忘れ去られた契約制度は一般に考えられている以上に使い道が広いということを、みていこうと思います。
第67表 種類別 夫婦財産契約の登記の件数(平成19年~28年) | ||||||||||||
種類 | 平成 28 年 | 平成 27 年 | 平成 26 年 | 平成 25 年 | 平成 24 年 | 平成 23 年 | 平成 22 年 | 平成 21 年 | 平成 20 年 | 平成 19 年 | ||
総数 | 23 | 6 | 10 | 13 | 10 | 11 | 13 | 4 | 6 | 9 | ||
登記 | 23 | 6 | 10 | 12 | 10 | 10 | 13 | 4 | 6 | 8 | ||
その他 | - | - | - | 1 | - | 1 | - | - | - | 1 | ||
(注) 「その他」には,管理者の変更又は共有財産の分割,登記事項の変更・更正を含む。 |
出典:法務省
2.法定財産制と夫婦財産契約
結婚にともない夫婦間の財産をどう取り扱うかを決めておく必要があります。たとえば、夫婦の一方が結婚の時に持参した財産は誰のものとするのか、夫婦が婚姻中に協力して得た財産は誰に帰属するのか、結婚にともない発生する費用は誰が負担をするのかなどを決める必要がでてきます。
この点について民法は、夫婦が結婚前に契約をするか、契約しない場合は法律に定めた財産関係で処理するとしています。日本の民法は契約財産制を原則として、例外として法定財産制を採用していることになります。実際は、例外と原則が逆転しています。(民法755条~762条)
(1)法定財産制
その内容は以下の三つです。
①婚姻費用の分担(民法760条)
結婚生活から生じる費用のことを婚姻費用といい、その分担の方法が決められています。
夫婦の資産・収入等の事情を考慮して分担することになります。
②日常家事債務(民法761条)
日常の家庭生活から生じた債務は夫婦が連帯して責任を負うとされています。
③財産の帰属(民法762条)
特有財産(夫婦の一方が単独で所有する財産)
夫婦各自が結婚する前から所有している財産、相続などにより各自の名前で得た財産をいいます。
共有財産(いずれのものか判別できない財産)
ふたりの共有の財産だと推定されます。
(2)夫婦財産契約
ア 夫婦財産契約の内容
夫婦が契約をすることによって、法定財産制と異なる内容にすることができます。契約の内容は公序良俗または強行法規に反しない限り自由です。
この契約に定めていない事項は法定財産制に従うことになります。
イ 夫婦財産契約の時期・登記・有効性
夫婦財産契約は契約の締結時期、登記の有無によってその有効性の範囲が違ってきます。
有効性の範囲は次の要件の組み合わせによって3つに分けられます。
①結婚前に契約・登記
夫婦間だけでなく夫婦以外の第三者にもその夫婦財産契約の内容を主張することができます。
②結婚前に契約・登記なし
夫婦間においては有効ですが、夫婦以外の第三者にはその夫婦財産契約の内容を主張することができません。
③結婚中に契約
登記はできません。
契約は有効ですが、夫婦間でした契約は結婚している間はいつでも夫婦の一方から取り消すことができます。取り消す場合は、夫婦以外の第三者の権利を害することはできません。(民法754条)
なお、夫婦間の契約の取消権は、夫婦関係が破綻しているときにはこの取消しはできません。(最高裁判決S42.2.2)
ウ 夫婦財産契約の登記、変更、廃止について
①登記申請
夫婦財産契約の登記のために必要な添付書類、登録免許税は以下のとおりです。
・夫婦財産契約書
・各人の戸籍謄本(契約当事者が婚姻をしていないことを証明するため)
・住民票(住所証明書)
・各人の印鑑証明書(3ヶ月以内のもの)
・登録免許税 申請書1件につき18,000円
②夫婦財産契約の変更・廃止
結婚後の財産契約の変更・廃止は認められていません。
これは第三者に対して主張できないということですが、夫婦間では取り消さない限りにおいて有効です。したがって、夫婦財産契約の変更条項はその限りで有効です。
3.まとめ
夫婦財産契約の概要は以上です。
長くなってきましたので、この忘れられた夫婦財産契約の活用については次回といたします。
夫婦財産契約の項目を挙げながら考えてみたいとおもいます。
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