子供が欲しいご夫婦の生殖医療の類型
こどもが欲しいと望みながらも子供に恵まれないご夫婦の望みの綱は,高度生殖医療でしょう。類型に分けて考えてみようと思います。子供を授からない原因が夫側にある場合,妻側にある場合,夫婦双方にある場合の三つに分けて考えます。
1.不妊の原因が妻側にある場合
これにはふたとおりの場合が考えられます。卵子の提供を受けた妻本人が出産する場合と,他の女性が出産する場合があります。
(1)体外受精した卵子を使用し妻自身が出産
夫の精子を受精した妻以外の女性の卵子を使い,妻が出産をする場合です。出生届がなされることによってその夫婦の嫡出子となります。法律的なトラブルがあまり発生していません。
野田聖子さんの出産がこの例です。この出産育児については本人がいろいろ発言しているのでご存じの方も多いでしょう。この治療の当初,未婚(事実婚)の状態であったため問題視されていました。のちに結婚をしています。
(2)妻以外の女性が出産(代理懐胎,代理母)
ⅰ 夫の精子で妻の卵子を体外受精させ,その卵子を使い妻以外の女性が出産する(借り腹,host mother)
向井亜紀さんのケースはこれに該当します。出産した子供の身分についての法務省とのやりとりは、『家族未満』(小学館 2007年)で詳細な内容が明らかにされている。結局,夫妻の嫡出子としては認められず,特別養子縁をおこなったと本人が発表しています。
ⅱ 夫の精子を妻以外の女性の卵子に人工授精して,人工授精したその妻以外の女性が出産する(狭義の代理母 surrogate mother)
2.不妊の原因が夫側にある場合
妻が夫以外の男性の精子で懐胎して,妻自身が出産する。
性転換で男性になったご夫婦のケースも,ここに分類されます。生物学的には男性の機能を持つことができません。先頃の最高裁判所の判断では嫡出子であるとして,そのご夫婦の実子と認定されました。
3.不妊の原因が夫婦双方にある場合
この場合には,養子縁組を検討するのが普通ではないかと思います。しかし,夫以外の男性の精子で受精した妻以外の卵子を妻に移植することによって妻自身が出産を望むということも考えられます。出産した女性を中心に考えるとすれば,夫婦の嫡出子となりそうですが,判断はどうなるのでしょうか。
4.まとめ
生殖医療の進歩に伴い,いままでの常識では判断できない親子関係が発生しています。それを法的な親子関係の枠組みにどう位置づけるかが問われています。
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