相続人のいない相続財産が増加しています。
相続人のいない財産が過去最高の375億円になったという記事が昨日(平成25年9月22日)の朝日新聞の38面に載りました。「増える 相続人なき遺産」。遺産を受け継ぐ人がいなくて国庫に納められる実態に興味が湧き,少し調べてみました。
相続人不明の相続発生件数,国庫納入金額,発生率ともに増加を続けています。
1.相続人がいないため相続財産が国のものになる流れは次のとおりです。
(1)家庭裁判所に選ばれた相続財産管理人が借金などを清算します。
(2)清算した後に相続財産の残りがあれば特別の縁故があったものにその貢献の度合いにしたがって家庭裁判所の判断で分配割合が決められます。
(3)債務の清算,特別縁故者への分与を経てなお相続財産の残余があれば国庫に納められます。
(注)特別縁故者とは死亡した本人の療養看護をおこなった人や内縁の妻,認知がされていない子,事実上の養子など故人と生計を一緒にしていた人のことをいいます。
2.国のものになった相続財産の総額
平成15年以降を見ますと平成20年,21年を除き一貫して増加傾向にあります。
平成15年度 146億。
平成20年度 222億
平成21年度 181億
平成22年度 262億
平成23年度 332億
平成24年度 375億
財務省予算書・決算書データベース,裁判所主管歳入決算明細書雑收
3.相続人不明のために相続財産管理人の選任等の件数
昭和24年以降平成19年,20年を除いて一貫して増加傾向にあります。
平成15年 9,244件(771件)
平成20年 12,382件(913件)
平成21年 12,883件(952件)
平成22年 14,069件(935件)
平成23年 15,676件(1,010件)
平成24年 16,751件(1,128件)
最高裁判所家事審判・調停事件の事件別新受件数-全家庭裁判所第2表
()内は特別縁故者への相続財産の分与件数
4.相続人不明の相続一件あたりについての国庫納付平均額
直接の統計がないので概数を推測してみました。相続人不分明の件数から特別縁故者への財産分与の件数を引いたものを国庫に納めた件数と考えてみました。その数字を使い一件あたりの国庫納付の平均金額を計算しました。
平成22年 199万円(13,134件)
平成23年 227万円(14,666件)
平成24年 240万円(15,623件)
()内は国庫納付相続件数の推定値
5.相続総件数に対する国庫納付発生率
死亡者数をそのまま相続発生件数として発生率を計算しました。
平成22年 1.09%(1,197,012人)
平成23年 1.17%(1,253,066人)
平成24年 1.25%(1,245,000人)
()内は死亡者数
6.まとめ
相続人不明の相続発生件数,国庫納入金額,発生率ともに増加を続けています。
(1)相続人不明者増加と高齢者の増加の関係
相続人不明者が増えたのは身寄りのない高齢者が増えたためだけだとはいえません。戦後死亡率は下がり続け昭和54年から昭和57年を転換点としてその後死亡率は増加傾向を維持しています。一方,相続人不明者の数は戦後一貫して増加しています。相続件数の増加(死亡率の増加)と相続人不明者の増加とは並行していません。確認はしていませんが,相続人不明者数の増加率から見ると高齢者の増加がその主たる原因になっているものと思われます。
(2)自己財産の処分
自分の財産が国庫に納められることをよしとするのであれば国庫への納付が増加することにとくに問題はありません。しかし,自分の財産を自分の死後も自分の意向に沿って使って欲しいと思っている人から見ますと不本意ということになります。死後の自己財産の処分には遺言が有効です。遺言書を作成することによって死後の財産を自分の希望にしたがって処分することが可能になります。
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