欠席裁判で自宅を競売にかけられ追い出されそうになった認知症の男性の話
北海道新聞(03/18 09:23、03/18 14:29 更新)
自宅を共同所有していた男性の元妻から約2割の所有権を購入。男性に対して残る約8割の所有権を売るよう持ちかけたが断られ、2013年10月に提訴した。
男性は、精神障害2級で障害者手帳を持つ長男と2人で暮らしている。訴状が自宅に郵送された際、受け取りの確認書類には男性か長男がサインしたとみられるが、親族はいずれにしても「内容を理解できていなかった」と言う。
裁判所は、書類に署名があったため、訴えを正式に受理した。ところが男性は法廷に姿を現さず、民事訴訟法の規定に基づき、不動産会社の主張を認めたとみなされてしまった。男性は敗訴し、控訴もしなかったため、敗訴が確定した。
男性の判断能力について、かかりつけ医は「財産を管理できない最低レベル」とする。男性は取材に対し、「(裁判について)そんなものは知らない」と話した。
成年後見という立場からこの事件を振り返ってみたいと思います。
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(1)共有物の分割
共有になっているものをそれぞれに分ける方法には三つ考えることができます。
①現物分割
共有になっているものを物理的に分割することをいいます。たとえば一枚の田が共有になっていれば,その田の持分が半分半分のときにはそれぞれの面積が同じになるように線を引いて二分割にし2枚の田にしますます。
今回は,家屋ですので現物を物理的に分割することを考えても意味がありません。
②代金分割
共有物を売り払って,その代金を分け合う方法です。
今回の裁判ではこの方法が採用されています。
③価格賠償
共有物の欲しい人が他の共有者にその人の持分に相当する金銭を払って買い取る方法です。
この事件の男性が裁判に出席していればこの方法が解決策として妥当な方法だったような気がします。しかし男性は認知症を患っていたために「財産を管理ができない」状態であり,裁判で訴えられているという状況を理解できていませんでした。
(2)共有者はいつで分割を請求が可能
自分は分割したくないとだだをこねても,分割を希望する人は裁判に訴えて無理矢理に分割を求めることができます。物が共有状態にあるのは望ましくないと民法は考えている証拠だという人もいます。
(3)訴訟能力
訴えたり(原告),訴えられたり(被告)するのにはそれ相応の判断能力が要求されます。今回は訴えられています。被告になれるかどうか。
①判断能力がない場合
本人は被告にはなれません。今回の事件ではこのケースにあたるのではないかと推測されます。本人は裁判を受けて立つ判断能力を欠いているのですから,原告の訴えは無効だということになります。
②成年被後見人・未成年者(絶対的訴訟無能力者)
本人に自身では原則裁判を受けて立つことができません。成年後見人(法定代理人)を通じて裁判に応じていくことになります。
③被保佐人・被補助人(制限的訴訟無能力者)
相手が起こした裁判に応ずる場合には保佐人・補助人の同意はいりません。
(4)成年後見制度による自衛
成年後見人が選任され,登記がおこなわれていれば,裁判所からの裁判に関する書類もその成年後見人宛に送られることになります。今回の事件のような欠席裁判がおこなわれることはなかったでしょう。いくら最終的に無効な判決になるとしても,その無効にする手続には経費と時間を費やさなければなりません。
トラブルに巻き込まれてから成年後見のご相談に見えることが多いのですが,問題が起こる前に成年後見の申し立てを検討しておく必要があります。成年後見の申し立ての準備を始めて家庭裁判所の審判が確定するまでに普通は6ヶ月くらいの期間が必要になります。急場には間に合いません。
神宮司行政書士事務所 055-251-3962 090-2164-7028
投稿者プロフィール
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