法定後見等が開始されると本人の選挙権などはどうなりますか。
成年後見制度について書かれたもののほとんどが支援をするものの側から書かれたものがほとんどです。
成年被後見人に選挙権がないと定めている公職選挙法11条は違憲だとして訴訟が起こされています。支援を受ける側からの問題提起ともいえます。
今回は,支援を受ける側の立場から成年後見制度を考えてみたいと思います。
その前に成年後見制度を整理しておきます。次のように分類されます。
成年後見制度
1法定後見制度
(1)成年後見制度
(2)保佐制度
(3)補助制度
2任意後見制度
法定後見制度での本人が受ける影響
(1)の場合です。支援する者(成年後見人)がついた時,支援される者(成年被後見人)は次のような影響を受けることになります。
ア 選挙権および被選挙権を失います(選挙権は回復,平成25年6月30日施行)
イ 印鑑登録が抹消されます。
ウ 会社の役員 医師 医療法人の役員 国家公務員 校長または教頭,弁護士,行政書士などの各種士業などの職業に就くことができません。
エ本人に代わってほとんど全ての行為を成年後見人が代理します。本人が行ったものは取り消すことができます。
(2)の場合です。保佐人がついて場合の被保佐人への影響。
ア 成年被後見人と違い,選挙権・被選挙権は失いません。また印鑑登録も可能です。しかし,就業できる職業の制限については成年被後見人と同じです。
イ 重要な行為は保佐人の同意が必要です。同意がない場合は取り消すことができます。
(3)の場合です。補助人がついて場合の被補助人への影響。
ア 成年被後見人,被保佐人と違い被補助人はアイウいずれの制限もありません。
イ 家庭裁判所で認められた行為については補助人の同意が必要です。同意がない場合は取り消すことができます。
任意後見制度での本人が受ける影響
任意後見が始まっても本人の影響はありません。本人は本人,任意後見人は後見人としてそれぞれ行動します。なお,本人の意思能力の有無は別に問題となります。
ア 選挙権・被選挙権,印鑑登録,就業の制限など一切ありません。したがって,会社の役員にそのままとどまりたいという希望がある場合には任意後見を検討することになります。
イ 本人の行為は制限されません。したがって,任意後見人には取消権がありません。
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