円満相続は家族円満から(遺言書は万能ではない)
相続関係の本やアドバイスを見ると,自分が亡くなった後に家族間で揉めないように,遺言書を残しましょうと書かれたものが多いようです。
たしかに,親の死後に遺産相続をめぐって家族・兄弟姉妹間で骨肉の争いが発生することも,多いのは事実です。ひとは,これを争族と呼んだりしています。こうした争族には遺言書が大きな役割を果たします。
しかし,ふだんから反目していた家族・兄弟姉妹間では遺言書がなければ当然ですが,遺言書があっても遺産分割の争いを防ぐことはできません。それどころか,遺産相続を契機に積年の恨みを爆発させることになります。
特別利益の判断で揉めます。「お前は,学校に行かせてもらった」,「お前は,外国旅行をさせてもらった。」,「そういえば,お前は,家を建ててもらった」とか次々と言いつのります。「生前に相続財産の前払いをしてもらったのだから,残った財産を均等に分けるのはおかしい」。こうなると,収拾がつかなくなります。
寄与分でまた揉めます。「俺は,親と同居して介護をしてきたが,お前たちは,介護もせずに自分たちの生活を楽しんでいた。苦労した分を多めにもらってもいいはずだ」といえば,これに反論して「介護をしたというが,その分家賃はいらなかったはずだ。親の預金でいい思いもしているはずだ」。ここでも言い合いは収まりません。
自筆証書による遺言であれば,署名が本人の自筆かどうかで揉めに,揉めます。本人の自筆の署名だということになったとしても,次に,遺言時には本人に判断能力はなかったので遺言は無効だと言い出します。
公正証書による遺言でも万全ではありません。公証人が本人の判断能力チェックをしていますが,完璧ではありません。公正証書遺言において本人が遺言書作成当時には判断能力がなかったとして,その有効性を否認されたこともあります。
最終的に,裁判を通じて遺産分割をおこなうことができるとしても,そこに費やすお金・時間・エネルギーは計り知れません。そして,残るのは家族・兄弟姉妹間のぬぐいがたい憎しみだけです。
家族・兄弟姉妹は日頃から仲良くすることを心がけるべきです。それが,遺産相続を円満におこなうこつです。遺言書も大事かもしれませんが,それは家族・兄弟姉妹が日頃から仲良く暮らしていることが前提です。親も,兄弟姉妹がお互いを理解し合える機会を,ことあるごとにつくることが大切ではないでしょうか。
仲良きことは,美しき哉(武者小路実篤)です。
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