養子の相続財産を相続する者が兄弟姉妹の場合,養子縁組前の兄弟姉妹は関係ない?

前回・前々回のブログで,主に,養子縁組先の実子が亡くなった場合を検討しました。
養子縁組先の兄弟姉妹がなくなり,養子を含む他の兄弟姉妹が相続人になる場合,相続分は全血・半血の兄弟姉妹の区分により,半血の兄弟姉妹は全血の兄弟姉妹の半分となります。

前前回ブログ:「養子にも全血の兄弟姉妹,半血の兄弟姉妹があります(兄弟姉妹間の相続割合)。
前回ブログ :「養子にも全血の兄弟姉妹,半血の兄弟姉妹があります(兄弟姉妹間の相続割合)その2

今回は養子が亡くなった場合において,「養子縁組先の兄弟姉妹」と「その養子の実の兄弟姉妹」との相続関係をみていきたいと思います。

Contents

1.養子の死亡により相続人として2系統の兄弟姉妹

(1)相続人としての実方の兄弟姉妹と養方の兄弟姉妹

養子が死亡した場合,その亡くなった養子に養子縁組前の兄弟姉妹が存在することも考えられます。
この場合の養子の兄弟姉妹は,養子縁組前の兄弟姉妹と養子縁組先の兄弟姉妹の2系統の兄弟姉妹が登場してきます。

(2)2系統の兄弟姉妹の相続分の全血・半血の判断基準

2系統の兄弟姉妹を半血・全血と区分する判断基準は明確には民法は示していません(民法900条4号)。それではその判断基準をどう考えたらよいのでしょうか。

養子と養父母の親子関係は、実父母との親子関係と同様のものであるといえるから、父母の双方を同じくする兄弟姉妹であるか一方のみを同じくする兄弟姉妹であるかの判定に当たっては、実親であるか養親であるかの区別をする必要はないと考えられる。
国税不服審判所 平成16年12月13日裁決書抄

この審判の考えにしたがえば,両親を同じくする兄弟姉妹とは
①父に関して同一の父であればよく,実父・養父の区分必要ない。
②母に関して同一の母であればよく,実母・養母の区分必要ない。
つまり,父Fと母Mの子であれば,F・Mを両親に持つ子は全血の兄弟姉妹関係です。

たとえば,
Aの父が実父F,母が実母M
Bの父が実父F,母が養母M
Cの父が養父F,母が実母M
だとすると,A,B,Cは両親を同じくする兄弟姉妹であり,全血の兄弟姉妹関係となります。

2.いくつかの具体例

(1)単独養子縁組

単独養子縁組相続関係図

単独養子縁組相続関係図

「養子が死亡した場合に、その養子に実父母の双方を同じくする兄Bと、養父とその妻(養母ではない)との間に生れた弟Cがあるときは、BCともAの相続人となるが、その相続分はAが3分の2、Bが3分の1である」
これはすこし変形していますが,先ほど示した裁決書抄に出てくる「昭和32年6月27日民事甲第1119号民事局長回答」に示されている事例です。
詳解すると次のようになります。

Cは甲男・乙女の実子
Aは甲男と養子縁組,また,a男・b女の実子
Bはa男・b女の実子

Aが死亡した場合のB,Cとの兄弟姉妹関係

①Bの両親は実父a,実母bであり,Aと両親を同じくする兄弟姉妹ですから全血の兄弟姉妹関係です。
②Cの父は実父甲男であり,Aの父は養父甲男ですので父は同じくしています。しかし,C,Aの母は同一ではありませんので,C,Aは半血の兄弟姉妹関係になります。
したがって,AはBとは全血の兄弟姉妹関係であり,Cとは半血の兄弟姉妹関係となります。

(2)両再婚の夫婦が連れ子と互いに養子縁組

再婚時相互養子縁組相続関係図

再婚時相互縁組相続関係図

「甲乙夫婦間にABの2子があり、丙丁夫婦にはCDの2子があり、乙丙死亡し、甲丁が婚姻、甲はCDを養子とし、丁はABを養子とした後、甲丁が死亡し、その後ACDのいずれか1人が死亡し兄弟姉妹が相続人になる場合におけるABCDの相続分は平等である。」
これはすこし変形していますが,先ほど示した裁決書抄に出てくる「A 本件事例二」に示されている事例です。

A,Bはともに甲男・乙女の子
C,Dはともに丙男・丁女の子
乙女,丙男が死亡して,甲男,丁女が再婚
再婚にともない,甲男はC,Dと養子縁組,丁女はA,Bと養子縁組

Aが死亡した場合のB,C,Dとの兄弟姉妹関係

①Aの父は実父甲男,母は養母丁女です。(また,母は実母乙女でもあります)
②Bの父は実父甲男,母は養母丁女です。(また,母は実母乙女でもあります)
③Cの父は養父甲男,母は実母丁女です。(また,父は実父丙男でもあります)
④Dの父は養父甲男,母は実母丁女です。(また,父は実父丙男でもあります)
したがって,B,C,DはAとともに父を甲男,母を丁女としていますので,父母の双方同じくする全血の兄弟姉妹関係にあることになります。実父・養父,実母・養母の区分は問いません。

3.まとめ

養子が死亡した場合の半血・全血の兄弟姉妹の判断は,実親子であろうと養親子であろうと,父母の双方が同じ場合には全血の兄弟姉妹関係です。また,養子縁組前の兄弟姉妹であると養子縁組後による兄弟姉妹であるとにかかわらず,相続人としての兄弟姉妹関係になります。
死亡した兄弟姉妹である者の財産を他の兄弟姉妹が相続する場合は,半血の兄弟姉妹関係にある者の相続分は全血の兄弟姉妹関係にある者の相続分の半分となります。

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投稿者プロフィール

神宮司 公三
神宮司 公三神宮司行政書士事務所所長
山梨県甲府市の特定行政書士。守秘義務がありますので相談したことが外部に漏れることはありませんので,安心してご相談ください。幅広い範囲のお困りごとに対応しています。お気軽にお問い合わせください。遺言書作成,相続手続の相談,官公署への許認可の相談・申請手続き代理,任意後見・法定後見のご相談,ご契約についてのご相談など。

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