亡くなった人が,まだもらっていない年金は誰のもの? (未支給年金の帰属)
国民年金や厚生年金は後払いのために,本人が亡くなったときに必ず受取損なった年金が残ってしまいます。この受け取り損なってしまった年金のことを未支給年金といいます。
一見したところ相続財産のように思われますが,相続財産ではないというのが最高裁判所の判断です。
Contents
1.年金の支払
(1)支給月
年金の支払いは偶数月に支払われます。
通常は偶数月の15日,その日が土曜,日曜,祝日のときは,直前の金融機関の営業日です。
(2)支給分
支払月の前月までの分が支払われます。
(3)受給者死亡時
死亡月の分は日割りでなくひと月分の支給されます。
2.未支給年金
(1)未支給年金の発生
①死亡日が奇数月の場合
2ヶ月分が未支給年金となります。
たとえば9月に亡くなった場合は,8月,9月の2ヶ月分が未支給年金の額となります。
②死亡日が偶数月の場合
3ヶ月分が未支給年金となります。
たとえば10月に亡くなった場合は,8月,9月,10月の3ヶ月分が未支給年金となります。
2.未支給年金の法律的性質
(1)非相続財産
未支給年金は相続財産ではないと最高裁判所が判断をしました。それにより,その議論に決着がつきました。
未支給年金は相続財産ではないので,遺産分割の対象にはならないということになります。
(平成7年11月7日最高裁判決:http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57054
(2)未支給年金の請求該当者とその順位
死亡した人に支給すべきであった未支給の年金は,死亡当時に生計を一にしていた次の人達が請求することになります。
請求の順位は記載の順に従います。同順位にある人が複数の場合は、請求者に対する未支給年金の支払いをもって同順位者全員に支払ったものと見なされます。
生計を一にしていない人は受け取ることができません。順位の上の人が受け取ったときには,次順位以降の人は当然ですが,受取人にはなれません。
なお,該当者が相続放棄をしても,未支給年金は受け取ることができます。
①配偶者
②子
③父母
④孫
⑤祖父母
⑥兄弟姉妹
⑦これらの者以外の三親等内の親族
参考のブログ:親族,血族,姻族,4親等内の親族
3.課税関係
(1)未収年金の受取人に対する課税
未支給年金の受取人は,相続税ではなく一時所得としての課税がなされます。
参照:国税庁の未支給年金の課税関係のページ
(2)遺族年金に対する課税
厚生年金や国民年金などを受給していた人が死亡したときに遺族の方に対して支給される遺族年金は、原則として所得税も相続税も課税されません。
4.まとめ
亡くなった人が受け取るべきであった未支給の年金は,相続財産ではなありません。決められた人が自分の固有の財産として請求します。したがって,遺産分割の対象ではありません。
「相続 とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたものであり、 死亡した受給権者が有していた右年金給付に係る請求権が同条の規定を離れて別途 相続の対象となるものでないことは明らかである。」(最高裁判決抜粋)。
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