おひとり様(身寄りのない人)の法定後見申立は誰がしたらいいか。
身寄りのないおひとり様が認知症になってしまった場合に,家庭裁判所に法定後見の申立てを誰がしたらよいのでしょうか。
市町村長申立によるか,家庭裁判所に選任された弁護士を申立代理人とした本人申立を検討してみるのがいいのではないでしょうか。以下に詳しく見ていきます。
1.民法で決められている申立のできる人
(1)配偶者
おひとり様ですから,配偶者はいません。
(2)四親等内の親族
身寄りもいません。身寄りはいたとしても,その所在も不明です。
(3)検察官
検察官から申し立ててもらうことは可能でしょうか。ほとんど例がなく,実務上は機能していません。もしどうしても公益代表の検察官からの申立を検討しなければならない場合は,本人の周囲の人が検察庁に連絡する必要があります。
(4)本人
認知症を患っている本人からも申立ができます。とはいえ,認知症であるから法定後見を必要としているわけです。そのため,本人の判断能力がはなはだおぼつかない場合も出てきます。
そのときには,家庭裁判所は手続代理人として弁護士をつけることになっています。本人が申し出るか,本人が申し出なくても家庭裁判所の自分の判断によって手続代理人をつけることができます。しかし,費用の問題などを考えると,手続代理人をつけることは費用負担に問題がないなどの場合に限定されます。
2.老人福祉法による市町村長申立
老人福祉法に定めるところにより,市町村長も法定後見の申し立てをすることできます。その人の幸せのために特に必要と市町村長が判断したときに,申し立てることになります。
特に必要があるときとは次のようなことを言います。
(1)親,兄弟姉妹など二親等内の親族がいない。
(2)二親等内の親族がいても音信不通の状況にある。
(3)審判の請求をおこなおうとする三親等,四親等の親族も不明である。
こうした親族状況にあるために,親族による法定後見の申立てが期待できない場合で,本人の保護が必要であること。
(平成17年7月29日厚生労働省社会・援護局通達)
市長申し立ての実績は増加してきているとは言え,地域格差も大きいものがあります。各市町村超による成年後見の申立てが充実することが望まれます。
最高裁判所による統計によると,市町村長申立は次のような推移を示しています。制度がスタートした平成12年には23件でした。平成18年4月から一年間は1033件,全体の3.1%。平成23年1月からの一年間では3680件,全体の11.7%となっています。
注:老人福祉法では65歳以上のものが対象ですが,それ以下の年齢であっても,知的障害者福祉法,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律により市町村長申立が認められています。
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