配偶者居住権

1.配偶者居住権と配偶者短期居住権の違い

 似たような名前で紛らわしいのですが、「配偶者短期居住権」とはその名のとおり配偶者のために用意された相続発生直後の短期の居住権です。
 前々回、お話しをさせていただきました。
 参考ブログ:
夫が死亡しても夫の家に半年は住み続けられる(配偶者短期居住権)前編
夫が死亡しても夫の家に半年は住み続けられる(配偶者短期居住権)後編

 今回は短期のつかない「配偶者居住権」についてみていきたいと思います

 「配偶者居住権」とは、相続財産の分け方として新しくできた方法です。
 居住建物を使用権(配偶者居住権)とその使用権をのぞいた残余の権利に分けて遺産分割することを可能としました。

2.配偶者居住権の概要(民法1028条)

  配偶者居住権とは、簡単に言えば配偶者短期居住権の期間を原則配偶者が死亡するまでに延長したものです。
 つまり、死亡した者(被相続人)の所有していた建物をその配偶者が終身無償で使用できる権利です。使用期間を終身でなく別に決めることもできます。

 相続人の財産で配偶者が住んでいた居住建物の財産価値を居住権部分とそれ以外の部分とに分離して相続財産価額を計算します。
 参考:配偶者居住権の評価の簡易検査方法
 長期居住権の簡易な評価方法について

 配偶者居住権が発生するのは、遺贈か相続人による遺産分割協議によります。遺贈には、死因贈与は含まれませんので注意が必要です。(民法1028条1項二号)

3.配偶者居住権を利用した遺産分割例

(1)居住建物の財産価値の割合が相続財産中大きな部分を占める場合

 一例として次のような家庭における相続。妻ひとり子がひとりの相続人。相続財産は自宅2000万円、預貯金3000万円。法定相続割合、妻2500万円、子2500万円。

 この例において配偶者居住権が認められていなかつた旧民法では妻が自宅に住み続けたいと希望する場合には、預貯金の相続分は500万円のみとなります。つまり自宅2000万+預貯金500万円=2500万円を相続したことになります
 しかし、これでは今後の生計の費用が不足する事態も考えられます。

 そのような不都合を解消するための工夫として新設されたのが配偶者居住権です。配偶者居住権を利用して以下のような遺産分割が可能となります。

 自宅の2000万円を配偶者居住権1000万円、配偶者居住権の負担付き所有権1000万円に分割。預金も妻・子が各2500万円に分割。
 この配偶者居住権を生かした遺産分割により、妻は住む場所が確保できるだけでなく、生計費として1500万円も手に入れることができます。

遺産分割事例参考:
 「配偶者の居住権を長期的に保護するための方策

(2)高齢者再婚者の妻と夫側の子の相続

 高齢者の再婚が話題になりますが、その結婚の障害として夫側の子供の相続をめぐる思惑による再婚の反対があると言われています。

 新設された配偶者居住権を利用して夫側の子の不満を和らげることが期待されています。
 再婚相手の妻に配偶者居住権を与え、子には自宅建物の所有権を与えます。こうすることによつて、妻は慣れ親しんだ居住建物に終生住むことができるようにするとともに、子には妻が死亡した暁には自宅建物を与えることができます。

4.配偶者居住権の限界

 配偶者居住権が相続において使われる場面は限定手的なものです。遺産分割で利用できる手法が一つ増えただけだともいえます。
 配偶者が被相続人の建物に居住しているからと言って、必ずしも一般的に配偶者居住権を使って遺産分割がされることを想定して新設された制度ではありません。

 遺産分割協議、遺言などにおいて配偶者居住権を取り入れるかどうかは、その家庭の事情、相続財産の内容などを総合的に勘案した上で、判断するのがよろしいのではないでしようか。

5.配偶者居住権を相続に使用する場合の注意点

(1)「相続させる旨の遺言」

 「相続させる旨の遺言」において配偶者居住権を相続させた場合は、配偶者居住権だけを放棄することができません。配偶者居住権の放棄を希望する場合には相続そのものを放棄するしかありません。

(2)遺贈による場合

 遺贈より「配偶者居住権」を取得させる場合には、配偶者居住権が不要のときは配偶者居住権の遺贈だけを放棄するだけでよく、相続権は残ります。(民法986条1項)
 配偶者居住権の遺贈には死因贈与は含まれていませんので注意してください。

(3)特別受益の払戻し免除

 配偶者居住権の遺贈において払い戻し免除の意思表示をしておくことによつて、配偶者の保護がより図られます。(民法903条3項)
 さらに、上記特別受益の払戻し免除の意思表示がなされていなくても、20年以上連れ添つた夫婦(婚姻期間が20年以上の夫婦)であるときは払戻し免除の推定がなされます。(民法1028条3項が903条4項を準用)

(4)配偶者居住権の期間の定め方

 配偶者居住権の存続期間を「当分の間」「別途協議する」などと遺贈、遺産分割協議で定めた場合には配偶者居住権を登記することができません。(不動産登記法81条の2一号)

(5)配偶者居住権を遺贈の目的とする遺言の作成日

 配偶者居住権を遺贈の目的とした遺言をおこなうことができるのは西暦2020年4月1日以降です。それ以前になされた遺言には適用されません。
 また、配偶者居住権の適用は西暦2020年4月1日以降に発生する相続に適用がされます。それより前に発生した相続には適用されません。

6.配偶者居住権に関するその他の事項

 相続が開始後の事項として次のようなものがあります。
 配偶者居住権を得た配偶者の居住建物使用の権利や義務の内容、関係者以外の第三者に対する対抗力、配偶者居住権の更新・途中退去、居住建物の返還・費用負担など。
 こまごまとした内容になりますので、機会をあらためて見ていきたいと思います。

7.まとめ

 配偶者居住権は種々ある遺産分割の一手法であり、これを持つて配偶者が抱える相続時の課題が一挙に解決するという類のものではありません。
 ご家庭の家族関係、相続される財産内容により相続時の課題は各ご家庭独自のものです。配偶者居住権を上手に利用して遺言書作成などの終活に生かしてください。

遺言・相続のご相談は山梨県甲府市の神宮司行政書士事務所まで 
神宮司行政書士事務所 055-251-3962 080-6685-9886 お問合せ方法はこちらをクリック follow us in feedly

Follow me!

投稿者プロフィール

jinguuji
jinguuji神宮司行政書士事務所所長
山梨県甲府市の特定行政書士。守秘義務がありますので相談したことが外部に漏れることはありませんので,安心してご相談ください。幅広い範囲のお困りごとに対応しています。お気軽にお問い合わせください。遺言書作成,相続手続の相談,官公署への許認可の相談・申請手続き代理,任意後見・法定後見のご相談,ご契約についてのご相談など。

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    ©2014 神宮司行政書士事務所