父親の相続放棄すると祖父の相続もできなくなるか(相続放棄と代襲相続)後編
前回からの続きです。
「父親の相続放棄すると祖父の相続もできなくなるか(相続放棄と代襲相続)前編」
Contents
3.相続放棄と代襲相続との関係
(1)問題の所在
「祖父の代襲相続の権利は父の相続の財産の一部であるので,父の相続放棄を行った後には,祖父の代襲相続権はないのではないか」という疑念が出てきます。つまり,父の相続放棄をすることには父を媒介とした代襲相続権の放棄も含まれているという解釈が成り立つかという意味と同じになります。
(2)相続放棄が及ぶ範囲
①代襲相続人
代襲相続の生じる原因の規定において代襲原因としてあげられているのは次の3つです。その3つの場合には,その者の子(長男)が代襲して相続人となるとしています。なお,相続放棄は代襲原因に含まれていません。
・被相続人の死亡以前の被代襲相続人の死亡(祖父の死亡以前の父の死)
・相続欠格
・相続廃除
②代襲相続人になれない人
被相続人(祖父)の直系卑属でない人は代襲相続人にはなれないとしています。
また,条文にはありませんが,代襲相続が被相続人(祖父)からの直接の相続という観点から,代襲相続人(長男)が被相続人(祖父)についての廃除者,欠格者である場合も代襲相続はできません。また,代襲者(長男)が被代襲者(父)の廃除者,欠格者である場合にも代襲相続は否定されます。
③代襲相続権の性質
「代襲相続権は,代襲相続人が被相続人を直接に相続する権利である。」(新版注釈民法(26)237頁,242頁)と解釈されています。ただし,その相続割合は被代襲者(父)の相続分に限定されます(民法901条)。
親の相続権を親に替わって代位相続するのではないのです。代位相続権であると考えると,被相続人の死亡以前に被代襲者が死亡している場合には説明がつきますが,被代襲者の欠格,廃除の場合には代襲相続が説明できなくなります。
④結論
代襲相続は被相続人(祖父)を直接相続する権利ですから,被代襲者(父)に対する相続の放棄がなされていたとしても,その相続放棄によって代襲相続が否定されることはないということになります。
注:被相続人に対する固有の相続権を認めないと考える人もいます。近江幸治「民法講義 親族法・相続法」
4.まとめ
父の相続にあたり,その相続を放棄した人であっても,祖父の相続にあたっては代襲相続者として相続が可能と考えられます。
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