東日本大震災に関する相続問題(熟慮期間・同時死亡の推定)

 2011(平成23)年3月11日14時46分頃に発生した日本の三陸沖を震源とするモーメントマグニチュード9.0の大地震とそれに伴う津波による大震災が発生しました。
 未曾有の被害がもたらされたのはご承知の通りです。2012年3月11日現在の警察庁のまとめでは死者15,854人,行方不明3,155人となっています。
 国はこの災害の混乱を避けるために「東日本大震災に伴う相続の承認又は放棄をすべき期間に係る民法の特例に関する法律」を平成23年6月21日に公布、施行しました。 
 この特例法は、東日本大震災の被災者であって平成22年12月11日以降に自己のために相続の開始があったことを知った方(相続人)について、相続の承認又は放棄をすべき期間(熟慮期間)を平成23年11月30日まで延長するものでした。この熟慮期間は通常は3ヶ月です。
 つまり,東日本大震災の混乱で「相続することによって死亡した人の借金を背負い込まないための相続財産の調査や裁判所への申出」が思うに任せないであろうことに配慮してこの特別法を作ったわけです
 東日本大震災では死者・行方不明者の数も想像を絶するものでしたが,家族が同時間帯に何人も死亡していることです。誰がいつ亡くなったかその死亡の先後の判断が付きかねる状況です。このようなどちらが先に死亡したかがはっきりしない場合に備えて民法は「同時死亡の推定」という規定を定めています。はっきりしないときには同時に死亡したと推定するというのです。
 相続の順位を考えるときには「同時死亡の推定を受けた者」は「同時推定の相手方の相続人」にはなれません。たとえば,父と子が大震災時に同時に死亡したと推定されたときには父は子の,子は父の相続人にはなれないと言うことです。これを「相続の同時存在の原則」と呼んでいます。
 死亡の先後によって相続人がどのようになるのか少し考えてみましょう。たとえば,父の祖父,父,父の配偶者,その夫婦の子という4人家族を想定します。ここで父と子が相次いで死亡したとします。相続するべき遺産は父だけにしかなく,子にはないとします。
 父が先に死亡したとしますと,父の配偶者とその子が父の相続人となります。次にその子が死亡するとその子の相続人は父の配偶者(母)です。結局父の配偶者(母)が父の財産のすべてを相続することになります。
 子が先に死亡したとしますと,父と父の配偶者が子供の相続人になります。ここでは相続する子の財産はありません。ついで父が亡くなると,父の配偶者と父の祖父が父の相続人となります。この場合では父の配偶者が父のすべての財産を相続するわけにはいかなくなります。
 同時に死亡したときには子は父の相続人にはなれませんので相続人は父の祖父と父の配偶者になります。子の相続人は父の配偶者(母)だけですが,このケースでは相続する子の財産はありません。結論は子が先に死亡した場合と同じになります。
 このように死亡の先後によって相続人が変わります。利害が絡んでくるわけです。同時死亡の推定は推定でしかありませんので先に死亡したのはたとえば父だと証明できればすべての父の財産は父の配偶者(母)のものとなるわけです。
 東日本大震災においても死亡の後先が相続のトラブルの種に発展したものもあるのではないでしょうか。
 相続問題も含めて被災地の方々は何重にも重なった災厄を背負い込まされてしまっています。一刻も早い復興を願うばかりです。
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投稿者プロフィール

神宮司 公三
神宮司 公三神宮司行政書士事務所所長
山梨県甲府市の特定行政書士。守秘義務がありますので相談したことが外部に漏れることはありませんので,安心してご相談ください。幅広い範囲のお困りごとに対応しています。お気軽にお問い合わせください。遺言書作成,相続手続の相談,官公署への許認可の相談・申請手続き代理,任意後見・法定後見のご相談,ご契約についてのご相談など。

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