近隣で続いた葬儀におもう(2)農村での相続事情
前回からの続きです。
前回,私の近隣では世間一般にいわれるほど相続におけるトラブルが少ないというお話をさせていただきました。
近隣の人間がみな人格者だということもありますでしょうが,それだけでは説明がつきません。
売るに売れない農地
まず考えられるのが相続財産が農地だけだということです。
農地はそれを自分で利用するにしても,他の人に譲るにしても,土地がある市町村の農業委員会に許可申請をしなければなりません。勝手に利用したり,譲ったりはできません。原則,農地は農地として使わなければなりません。
現在農業をしている人であればともかく,都会に出てサラリーマンをしている人には農地は魅力がありません。農地としてしか使えず,農地としてしか売れない農地は価値がないのでしょう。市街化調整区域の山間地の農地などどれほどの価値もないのです。
長男相続の慣習
次に考えられるのは都会地とは違い山間地の農家では旧来の長男がその家の財産を家長として継ぐという考え方が根強く残っているということです。
子供が均等に親の財産を相続するという新民法の考え方は実質的な常識となってはいません。
相続紛争の火種
いつまでもこうした平和な状況は続かないでしょう。子供には親の財産を均等に相続する権利があるという権利意識は田舎といえども徐々に常識化され始めています。
現在市街化調整区域内のために農地を農地としてでなければ使用・売買できませんが,市街化区域に指定替えになれば一気に農地の流動性が高まり,値段も急騰します。お荷物の農地が宝の山になりますので,その分け前について色気も出てくるというものです。
いつまでものどかな農村であってほしいとはおもいますが,それは望むべきもないようです。
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