相続税対策は砂上の楼閣か
小規模宅地の特例改正を例として相続税対策,遺言について考えてみたい。
Contents
1旧来相続税と無縁だった家庭も小規模宅地の特例改正によって相続を課税される恐れが出てきた。
平成22年4月1日から,相続財産の評価をする時に利用できる「小規模宅地の特例」が改正になっている。
この改正の影響を強く受けると思われるケース。実家を離れて独立して生活をしている子供がいて,両親は2人で自宅に子供とは別に生活しているという家族環境の家庭であろう。
この家庭で父親が亡くなったとすると相続財産を計算して税金を支払わなければならない。納める税金の額を決めるもととなる相続財産を計算する。その計算をする時に「小規模宅地の特例」を使い一定の基準を満たす宅地についてその評価を少なくして見積もってよいという制度がある。(以下の計算は宅地の広さは200平方メートルと仮定する)。
改正前は自宅を子供が相続しようが妻が相続しようがこの特例の適用を受けることができた。ところが,改正後は妻が自宅を相続する時には以前と同様に特例の適用を受けられるが子供が相続すればこの適用は受けられないことになる。
特例の適用を受けることができればたとえば宅地の評価が1億だとすれば,その評価額は2000万でよい。しかし,子ともが相続するとなるとその評価額は宅地の評価そのままの1億となる。旧来の計算では5000万円。なんと倍額になる。
母と子で半分ずつ相続すると旧来は2000万の評価であったが,改正後は6000万円と旧来の3倍。
土地の値段が下がっているとはいえ,この評価アップは旧来相続税の対象にならなかった両親の自宅がほとんどの財産という家庭も相続税に無縁と言えなくなっている可能性がある。しかし,特例の適用条件の変更後の統計は未公表であるので断定的なことは言えない。
小規模宅地の特例改正についての解説はこちらのページがわかりやすいとおもう。 http://eye-plus.verse.jp/syoukibotakuti-jitaku.html (リンク先の都合によりリンク切れになっています)
2砂上の楼閣と化す恐れがある相続税対策
小規模宅地の特例改正の影響のことを初めとして節税対策と称するものが多々あるが,そのほとんどが現在の税制を基礎として綿密に練り上げたプランである。実際に相続が発生した時点にプランの基礎とした税制が改正されていないとはだれも保障できない。いってみれば,相続における節税対策とは「砂上の楼閣である」。
相続はすくなくとも数年後,あるいは十数年後という先々に発生する類のものである。目先1年後の所得税の話とは同列ではない。
3遺言は争族を避けるためのものであって,税金を少なくすることが目的ではない。
遺言を考えるにあたっては,残された家族の将来を考え一番よいであろうと考える財産の分け方になるように専念するべきであろう。節税対策はその後に参考程度に考えればよい。
養子縁組を節税対策として勧める者もあるが,節税対策以外にはなんの必要性もない養子縁組をおこない,かえって遺産相続における紛争を激化させたという例もある。
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